【遺伝】「ヒトノックアウトプロジェクト」に向けた地固め
Nature
2017年4月13日
「リバースジェネティクス」の手法を用いて遺伝子の機能を解明する研究が新たに行われ、ヒトにおける機能喪失変異の表現型の評価が行われた。今回の研究は、ヒトの遺伝子の機能を調べる大型研究の基礎固めとなった。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
遺伝子の機能を解明するための研究は、これまでモデル動物の重要な遺伝子をノックアウトして、その後の変化を調べるという方法で行われていた。今回、Sekar Kathiresanたちの研究グループは、逆のアプローチで研究を行った。つまり、パキスタン在住の10,503人のゲノムの遺伝子コード領域を解読し、1,317個の遺伝子の機能喪失を引き起こすと予想される約50,000の変異をそれぞれ1人以上の被験者で同定し、これらの変異が血液サンプルの検査で明らかになった200種ほどの形質のどれと関連しているかどうかを判定した。その後、この原理を証明する研究が行われ、特定の遺伝的変異を持つ患者が呼び出されて追加検査が行われ、その遺伝的変異によって食事中の脂肪分が循環血から除去される能力が高まることが明らかになった。
今回の研究では、このリバースジェネティクスの方法の可能性が実証され、ヒトゲノム全体で遺伝子の機能喪失変異の臨床表現型(疾患など)だけでなく、これまでより多くの生化学的表現型の評価を「ヒトノックアウトプロジェクト」の一部として行うための基礎固めになった。また、今回行われた初期研究は、独特な被験者選定に助けられている。パキスタン人は、近親婚の比率が高いため、特定の遺伝子が2コピーとも機能喪失している可能性が高く、それを検出できるからだ。
doi:10.1038/nature22034
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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