【健康科学】光スイッチを使ってマウスの視力を回復させる
Scientific Reports
2017年4月14日
失明したマウスの網膜の視覚応答を一時的に回復できる化合物について記述された論文が、今週掲載される。
網膜色素変性症(RP)と加齢黄斑変性は、桿体視細胞と錐体視細胞の欠損が関係する眼の変性疾患であり、視力障害が起こり、場合によっては視力を完全に失うこともある。いくつかの技術が、視力回復効果が期待される治療法として追求されており、その1つが光スイッチ化合物である。
光スイッチは、眼の神経イオンチャネルに光感受性を与え、光を使ったニューロン活動の制御を可能にする分子である。これまでにDENAQという光スイッチ化合物が、網膜色素変性症の齧歯類モデルの網膜の光応答と視覚行動を回復させたという研究報告があるが、この効果を得るにはDENAQを大量に投与する必要があり、この効果は投与の数日後に消失していた。
この論文で、Richard Kramerたちの研究グループは、DENAQより優れた光スイッチ化合物BENAQが開発されたことを報告している。Kramerたちは、動物モデルを使って実験を行い、BENAQがDENAQよりも20倍強力で、網膜の視覚応答を約1か月にわたって回復させることを発見した。BENAQの効力は、動物の失明した網膜に対して選択的に及び、その一方で健康な網膜には影響を及ぼさないと考えられている。また、光感受性を与えるために必要な濃度の10倍にしたマウスとウサギの実験では、BENAQが無毒であることが明らかになった。Kramerたちは、こうした特性によってBENAQが将来的な視力回復のための薬物候補として適している可能性のあることを指摘している。
doi:10.1038/srep45487
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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