【気候科学】南極の融解水による湖と河川の全体像を描く
Nature
2017年4月20日
南極の棚氷には広範な湖沼と水流のネットワークが数十年間にわたって存続し、棚氷を不安定化させ、崩壊の可能性を生じさせていることを報告する論文が、今週掲載される。これに対して、南極のナンセン棚氷から得られた証拠を分析した別の研究では、大型河川によって融解水が海洋に運ばれることによって、この効果が緩和されることが示唆されている。
表層融解水は、クレバスに流れ込み、再凍結し、水圧破砕を引き起こすことで棚氷の崩壊に寄与すると考えられている。しかし、南極上に形成される融解水の池と河川の全体像と存続期間については解明されていない。
今回、Jonathan Kingslakeたちの研究グループは、1973年以降の衛星画像と1947年以降の航空写真を用いて、南極全体での融解水の排水を分析し、ここ数十年間に表層での排水が起こっており、座礁氷から棚氷を横切って最大120キロメートルにわたって融解水が運ばれ、広範な池のネットワークを形成していることを明らかにした。この新知見は、南極での表層水の排水がこれまで考えられていたよりも広範に存在しており、今後温暖化が進むと南極の氷量減少が加速する可能性のあることを示唆している。
一方、Robin Bellたちの研究グループは、過去1世紀以上にわたって南極のナンセン棚氷からの融解水のかなりの部分が表層の河川網によって海洋に排出されていることを説明している。この河川の終点には幅130メートルの滝があり、ナンセン棚氷からの融解水の1年分に相当する水量がわずか7日で排出されている。この表層排水系は、融解水によるナンセン棚氷の不安定化を防ぐものと考えられている。融解水が保持されるシステムと排出されるシステムの両方が存在する理由を明らかにするには、さらなる研究が必要とされるが、今回の2つの研究結果は、融解水の動きが常に氷床を破壊する機構とはならないことを示している。
doi:10.1038/nature22049
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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