【遺伝】子育ての遺伝的性質
Nature
2017年4月20日
2種のマウスを使って養育行動の遺伝的な駆動要因を調べた研究について報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、これらのマウスの養育行動に影響を与える12のゲノム領域が同定され、養育の1つの側面である営巣においてバソプレッシンというホルモンが果たす役割が明らかになった。
哺乳類の養育行動は個体差、性差、種差が大きいが、マウスの場合には、仔の移動、寄せ合い、仔の面倒を見ること、仔の毛づくろい、営巣などの行動が含まれている。しかし、そうした行動を引き起こす遺伝的機構と進化的機構については、解明が進んでいない。
今回、Hopi Hoekstraたちの研究グループは、乱婚型のシカシロアシマウス(Peromyscus maniculatus)と一雄一雌型のハイイロシロアシマウス(Peromyscus polionotus)というごく近縁な2種のマウスを調べて、両者の養育行動に大きな違いがあり、それが遺伝性のものであることを明らかにした。Hoekstraたちは、量的遺伝学の手法を用いて、養育に関係する12のゲノム領域を同定し、そのうちの8つの領域が性別特異的な影響を及ぼすことを明らかにした。このことは、雄と雌の養育行動がそれぞれ独立して進化した可能性を示唆している。また、これらのゲノム領域の中には、養育に対して幅広い影響を及ぼす領域と特定の行動(例えば営巣)に影響を及ぼす領域があると考えられている。Hoekstraたちは、バソプレッシンのレベルを上昇させる遺伝的変化が、営巣行動の減少と関連していることを明らかにしている。また、Hoekstraたちは、視床下部においてバソプレッシンを放出するニューロンを人工的に操作する実験を行い、これによってマウスの営巣行動のレベルを変えることができることを発見した。今回の研究では、養育のような複雑な社会的行動の基盤となっている神経生物学的性質に関する新たな知見が得られた。
doi:10.1038/nature22074
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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