【発生生物学】未熟な胎仔を子宮外で保育するための装置
Nature Communications
2017年4月26日
母体外の人工子宮の中で超未熟仔のヒツジを保育するシステムが実証された。このシステムでは仔ヒツジの成長が4週間にわたって維持され、子宮外装置によって動物の機能が安定的に維持される最長記録となった。この研究成果を報告する論文が掲載される。
妊娠23週以降の未熟なヒト胎児の生存率は、質の高い新生児集中治療によって向上してきているが、超未熟状態が新生児の死亡と罹病の主たる原因の1つであることに変わりはない。これに対し、超未熟な新生児の妊娠週数を延長できる体外システムを設計する試みは成功していなかった。
今回、Alan Flakeたちの研究グループは、臍帯のインターフェースを介して酸素供給回路を組み込んだポリエチレンフィルム袋による閉鎖した人工的液体環境を開発して子宮内環境を模倣し、超未熟なヒツジ(妊娠23~24週のヒト未熟児と生物学的に同等)を使って、このシステムを検証した。Flakeたちは、4週間の研究期間において、この子宮外システムに置かれた仔ヒツジの血液ガス値と胎児循環が安定しており、正常な成長(肺の成熟と脳の成長)が見られたことを明らかにした。ただし、このシステムでの「培養」期間後の仔ヒツジの成長に関するデータは示されておらず、今回の論文には、このシステムを使った発育の長期的影響に関するデータはない。
過去に発表された技術では、胎仔の生存期間は数日だったが、今回の研究では、それより長い期間の生存が達成された。さらに重要な点は、ヒツジ胎仔の正常な生理機能が維持されたことであり、これが子宮外で実現されたことはなかった。ただし、このシステムをヒトに応用することを検討する前に若干の問題を解決する必要がある。例えば、ヒトの未熟児はヒツジよりもかなり小さいため、ヒトのための装置を特別に開発する必要があると考えられ、この装置と新生児を臍帯によって接続できない可能性があり、さらにはヒト胎児のための理想的な「羊水」を開発する必要がある。また、このシステムによって成長した新生児の長期的な健康についても明らかになっていない。
doi:10.1038/ncomms15112
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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