【気候科学】「地球温暖化の停滞」に関して見解が分かれている理由
Nature
2017年5月4日
地球温暖化に対する人間活動の長期的影響についての理解は、1998~2012年頃に起こった「地球温暖化の停滞」によっても揺るがないことを報告するIselin MedhaugたちのAnalysis論文が、今週掲載される。
この分析研究では、文献の検討に加えて、さまざまなモデルといわゆる「地球温暖化の停滞」以降の観測的証拠の再評価が行われた。この停滞期間中(1998~2012年)、地球の表面温度が気候予測から予想されるほどの上昇をしておらず、一部のモデルと観測結果が相互に矛盾していると考えられていた。こうした現象のために、少なくとも一部の人々が気候システムに関する現在の理解に対して疑問を呈している。例えば、人為的な気候変動と自然変動の理解がどの程度進んでいるのか、という疑問だ。これに対して、Medhaugたちは、結論が異なっている主な理由は、使用されたデータセット、対象期間、停滞期間の定義がそれぞれ異なっていた点にあると考え、モデルと観測結果を適切に処理すれば、両者間の不一致を解消できることを実証した。
直近の観測結果により、温暖化が停滞したと考えられている期間中にも気候温暖化が続いていたことが実証されており、2015年と2016年は、地球表面温度の記録上非常に高温の年となった。Medhaugたちは、地球温暖化の停滞が現在の気候システムに関する全体的な理解と矛盾していないという結論を示している。
同時掲載されるJames S. RisbeyとStephan LewandowskyのNews & Views記事には、次のように記されている。「温暖化の停滞に関する研究から得られる最も顕著な教訓は、定義を明確にし、停滞とされる現象を定量化、一般化できるように説明することが必要だということかもしれない。異常な気候事象に関する主張を用語の定義によって支えようとするのであれば、我々が用いるツールの場合と同じように定義の明確化が必要である」。
doi:10.1038/nature22315
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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