交尾は雌のショウジョウバエを攻撃的にするが、雄の加齢を遅延させる
Nature Ecology & Evolution
2017年5月16日
交尾がその後の雌ショウジョウバエの行動および雄ショウジョウバエの加齢の仕方に直接的な影響を与えうることを、今週オンライン掲載される2編の独立した論文が明らかにする。
交尾をした雌が攻撃性を増す種は多く、それは、仔を守る必要性と関係している可能性がある。しかし、この攻撃性の強化に関与する直接的な仕組みは明らかにされていない。交尾は雄の生理および加齢にも長期的な影響を与えるが、やはり、その仕組みはよく分かっていない。
1編目の論文で、Eleanor Bathたちは、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の雌が交尾後に他の雌に対して示す攻撃性の強化の一部が、精液の性ペプチド成分の直接的な影響であり、他の精液タンパク質もそれに関わっていることを示した。卵を作らない遺伝的変異体の雌および精子を作らない変異体の雄を利用することにより、精子が雌の攻撃性に与える直接・間接の影響が解き明かされた。研究チームは、精子が他の雌に対する攻撃性を直接強化するのであって、攻撃性は卵を作ることによる副産物であったり交尾自体の物理的作用の結果であったりするわけではないことを明らかにした。
もう1編の論文では、雌への接触が雄ショウジョウバエの寿命に与える悪影響を、Scott Pletcherたちが調べている。研究チームは、反対の性のフェロモン特性を有するように遺伝子が操作された雌雄を、対照とともに利用した。その結果、雌性フェロモンへの曝露が雄の寿命を短縮させるものの、交尾行動がこの悪影響を解消することが分かった。
今回の2編の論文は、ショウジョウバエで生殖の行動的、生理学的影響を探るのに利用することができる強力な遺伝学的ツールを示している。両研究チームは、哺乳類にも類似の影響が見いだされるのではないかと考えている。同時掲載のNews & Views記事では、Mariana WolfnerとTracey Chapmanが次のように述べている。「Eleanorたちの研究結果は、一方の性の攻撃的な行動がもう一方の性からの化学的メッセージに大きく影響されうることを示しており、雌の攻撃的行動の機能および適応的意義に関して多くの疑問を提起した」。
doi:10.1038/s41559-017-0154
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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