【ネットワーク科学】ノイズを発するボットが協調的な問題解決に役立つ
Nature
2017年5月18日
複数の人間集団が共通の目標を達成しようとする際に、ランダム「ノイズ」を生じるようにプログラムされた自律的な「ボット」が役立つことを明らかにした論文が掲載される。今回の研究は、人間のネットワーク内の戦略上重要な地点にノイズを発するボットを追加することが、多様な問題(例えば、量子問題の解決、考古学画像や天文学画像のカタログ作成)に取り組む上で役立つ可能性を示唆している。
共通の目標に向けた集団行動は、たとえ集団の構成員一人一人の興味が一致していても協調問題(個々の構成員にとっての最適解が必ずしも集団全体にとっての最適解とはならないという問題)に直面する。今回、白土寛和(しらど・ひろかず)とNicholas Christakisは、複数の集団の人々にネットワーク化カラーコーディネート問題を解決させることによって、この状況をモデル化した。この場合、被験者には20個のノードからなるネットワークと3つの色候補を示して、それぞれのノードの色が隣接するノードの色と異なるように全てのノードの色を決めることを集団全体の目標としたが、被験者一人一人は自分に割り当てられたノードとそれに隣接するノードの色しか見ることができなかった。この実験で、低レベルのランダムノイズを示すようにプログラムされたボットをこのゲームの中心的位置に加えたところ、各集団の集団としての成績が上がり、被験者が問題解決に要する時間が短くなった。
ノイズとは、1つの過程における無意味な情報のことであり、トラブルの原因とされることが多い。しかし今回の研究で、行動のノイズには、既に問題の解決方法が分かっているアクターをネットワークに組み込むことに似た効果があった。興味深いのは、このボットがうまくいったのは、ボットが接続された人間の課題が容易に解決できるようになったからだけでなく、被験者間の交流の態様が影響を受けたからということだ。たとえ被験者がボットと情報交換をしていることを知っていた場合でも、いくつもの便益が次々に生み出され上述の効果が生じたのだった。
doi:10.1038/nature22332
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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