【気候科学】沿岸部における洪水の発生頻度が倍増する恐れ
Scientific Reports
2017年5月19日
2050年には海水準が現在より5~10 cm上昇することが予測されているが、これによって多くの地域、特に熱帯地方の沿岸部における洪水事象の発生頻度が倍増する恐れのあることを示唆するSean Vitousekたちの論文が掲載される。Vitousekたちは、海水準が10 cm上昇すると、高緯度域、とりわけ北米西海岸(バンクーバー、シアトル、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど)とヨーロッパ大西洋岸での洪水の潜在的リスクが倍増するという考えを複数のモデルに基づいて示している。
沿岸部の洪水は、大波、高潮、満潮などの同時発生する因子によって水位が極端に高くなった時に起こることが多い。しかし、海水準の上昇を原因とする沿岸部の洪水の増加に関する全球的推定では、波を原因とする水位の上昇が考慮されておらず、その影響可能性が過小評価されている。
今回、Vitousekたちは、極値理論(大規模事象の発生確率または再来周期を定量化するための統計的手法)を用い、海水準の予測と波・潮汐・高潮のモデルを組み合わせて、沿岸部における洪水の増加を推定した。2030~2050年に海水準が今より5~10 cm上昇することが大部分の予測で示されているが、それによって世界の多くの地域で洪水事象の発生頻度が倍増することが今回明らかになった。Vitousekたちは、5 cmの海水準上昇によって著しい影響を受けると考えられる都市としてムンバイ、コーチ、グランデヴィトーリア、アビジャンを挙げ、10 cm未満の海水準上昇によって、インド洋、南大西洋と熱帯太平洋のかなりの部分で洪水のリスクが倍増するという考えを示している。
doi:10.1038/s41598-017-01362-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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