テロリストの道徳的判断
Nature Human Behaviour
2017年5月27日
テロリストの道徳的判断は、行為の結果への異常ともいえる過度の依存に導かれていることが、このたびオンライン版で発表される論文で示唆された。
テロ行為は、一般社会から容認されない行為であるとみなされるのが普通だが、テロリストは自らの行為を、「目的は手段を正当化する」という論理によって正当化する。しかしながら、テロリストがこのトレードオフをどのようにとらえて道徳的判断を下しているかは十分に分かっていない。典型的な成人の道徳的判断は、人が行為の意図および結果についての情報を表現して統合する能力に基づく。多くの場合、道徳的判断は主に意図によって決定される。しかし、意図と結果が対立すると、道徳的判断は通常、両方の要素を考慮することで下される。
今回の研究でSandra Baezたちは、テロ行為の罪で投獄されたコロンビア人(全員が殺人罪で起訴され、1人あたりの犠牲者数は平均33人)の右派民兵組織に属する66人と、社会人口学的にマッチさせた非犯罪者(対照群)66人、および投獄中の殺人犯13人を対象に一連の認知・心理テストを行った。テストでは、道徳的認知、知能指数(IQ)、実行機能、攻撃的行動、情動認識が評価された。その結果、テロリストは非犯罪者と比較して、高いレベルの攻撃性および低いレベルの情動認識を示すが、道徳的認知にみられる差は、テロリストと対照群のあいだで著しく大きかった。Baezたちは、テロリストは他者の行為が道徳的に許容されるか否かを判断する際、対照群についてみられるように意図と結果の両方を統合するのではなく、主に結果に注目するということを明らかにした。この知見は、テロリストの行動規範が、手段よりも目的を重視することを示唆していると論文では指摘されている。
Baezたちは、歪んだ道徳的判断というこのパターンは、テロリストのプロファイルの重要な構成要素であるが、道徳的判断の源、および時間経過に伴うその変化を理解するためには、さらに研究が必要であると結論づけている。
doi:10.1038/s41562-017-0118
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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