【神経科学】ラットの嗜癖行動は父系遺伝する
Nature Communications
2017年5月31日
ラットの雄の仔がコカインへの嗜癖的行動に対して感受性を有することが、その父のコカイン探索への動機付けレベルと相関していることが判明した。この新知見は、薬物探索行動が構造DNAメチル化の差異と関連していることを示しており、このことは薬物嗜癖になる傾向の遺伝性の一因となっている可能性がある。この研究成果を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Lan Maたちの研究グループは、行動課題の結果に基づいて雄のラットをコカイン探索への動機付けレベルの高いグループと低いグループに分け、コカインの自己投与への動機付けレベルによって雄の仔のコカイン探索への動機付けレベルが決まると考えられることを明らかにした。コカイン探索への動機付けの低いグループでは、仔に対する防御的な影響が見られ、仔はコカイン探索への動機付けレベルが高くなることに対する抵抗性を備えていた。このことは、過去の研究報告と一致していた。一方、コカイン探索への動機付けの高い雄のグループでは、仔の薬物嗜癖への動機付けレベルが高く、あるいは薬物嗜癖に対する抵抗性が低かった。
DNAメチル化は、遺伝子発現がエピジェネティックに制御される形態の1つだが、コカイン探索への動機付けの高い雄のマウスと低い雄のマウスでは、精子におけるDNAメチル化部位が異なっており、こうした差異の一部は、仔の精子においても維持されていることが明らかになった。今回の研究では、脳の報酬回路の一部である側坐核の遺伝子発現解析も行われ、コカイン探索への動機付けの高いマウスと低いマウスの仔において発現の異なる遺伝子が同定されたが、この点は、精子におけるDNAメチル化パターンに差異があることと一貫していた。
doi:10.1038/ncomms15527
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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