【保全】人間の富と人口増加のために絶滅の危機に瀕している動物と鳥たち
Nature
2017年6月1日
人口増と人間の収入増のために、今後50年間に絶滅危惧種の数と絶滅リスクの重篤度が急激に増大するという予測を示したReview論文が今週号のInsight(生物多様性特集)に掲載される。これに対しては、持続可能な農業、土地開墾事業の縮小、自然の陸地の保護といった目標に向けた積極的な国際的取組みを進めることで、地球上で保持されている生物多様性のかなりの部分を守れる可能性のあることが明らかになった。
今回、David Tilmanたちの研究グループは、世界で生物多様性の最も高い地域のうちの3地域(1. 東南アジア・インド・中国、2. サハラ砂漠以南のアフリカ、3. 南アメリカの熱帯地域)に生息する陸生哺乳類と陸生鳥類に対象を絞って分析を行った。それぞれの地域では、富と人口密度が急激に増大したため数万種の動物が絶滅の危機に瀕している。
今回の研究で、生息地の減少と環境悪化が、動物種が占有できる地域の縮小とその結果としての個体数減少をもたらすために陸生哺乳類と陸生鳥類に対する直接的な脅威になることが最も多いことが明らかになった。そして、陸生哺乳類と陸生鳥類の絶滅危惧種全体の約80%が農業を原因とする生息地減少によって絶滅の危機に瀕しており、40~50%が狩猟とその他の種類の直接的な死によって絶滅の危機に瀕している。
現在の保全事業の成果について、Tilmanたちは、過去1世紀に少なくとも31種の鳥類が絶滅を免れ、脊椎動物の絶滅危惧種の20%(推定)が絶滅に近づかなかったことを報告している。また、飼育下繁殖事業と再導入事業によっても数種(アラビア・オリックス、カリフォルニアコンドルなど)が絶滅から守られたが、政策と慣行には今でも改善の余地が残っている。例えば、アフリカの多くの地域では、ライオンの個体数が本来達成可能なレベルのわずか10%まで落ち込んでおり、ライオンに対する人間の圧力の増加が主たる原因とされるが、それ以外にも保護区におけるインフラ未整備と管理予算の不足も原因となっている。Tilmanたちは、先見の明と計画性と有効な保全政策があれば、地球上で生き残っている動物と鳥類の大部分が生息できる土地を確保でき、2060年には100億人に対して健康に良い食事を供給する能力が備わると結論づけている。
doi:10.1038/nature22900
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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