【医学】老化した肝細胞の除去による脂肪性肝疾患の症状緩和
Nature Communications
2017年6月14日
脂肪性肝疾患に関して、「古い」肝細胞(いわゆる老化肝細胞)の除去を利用した新しい治療法がマウスを使った研究で実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。この研究では、老化肝細胞が肝臓での脂肪の蓄積を促進し、老化細胞を選択的に死滅させる薬物を投与すると肝疾患を減らせることが明らかになった。
非アルコール性脂肪性肝疾患は、肝臓内に脂肪が蓄積する状態を特徴とし、肝炎、肝硬変、肝がんへ移行することもある。その発症リスクは、年齢とともに上昇するが、その理由は明らかになっていない。一方、老化細胞の蓄積は、いろいろなストレス(例えばDNA損傷)と肉体の老化に応じて進むが、これが高齢者の体組織と臓器の機能が衰える原因の1つだとする見解が提起されている。老化細胞は、基本的にその代表的な機能の大半が停止しているのだが、シグナル伝達分子を分泌することで隣接する細胞の機能を変えてしまうことがある。
今回、Diana Jurkたちはマウスを使った研究を行い、老化肝細胞による脂肪細胞の分解効率が正常な肝細胞ほど高くないために肝臓での脂肪蓄積が促進されることを明らかにした。またDNA損傷を誘発してマウスの肝臓における老化細胞の数を増やす実験が行われ、その結果、脂肪性肝疾患の症状が悪化した。これに対して、老化細胞を選択的に死滅させることが知られている2種類の薬物(ダサチニブとケルセチン)を投与したところ、マウスの肝疾患が減った。
今回の研究は、老化細胞が老化関連疾患に寄与する仕組みの解明を進めるものであり、老化細胞の死滅を目指した治療法が非アルコール性脂肪性肝疾患の患者にとって有益なものとなる可能性のあることを示唆している。
doi:10.1038/ncomms15691
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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