Research Press Release
【免疫】ヒトの免疫系は早い時期に子宮内で成熟している
Nature
2017年6月15日
ヒトの免疫系は、これまで考えられていたよりかなり早い時期に子宮内で成熟していることを示唆する論文が、今週のオンライン版に掲載される。この新知見は、免疫系の発生に関する現在の理解に変更を加えるものであり、妊娠糖尿病、反復性自然流産といった特定の妊娠関連疾患に関する手掛かりとなる可能性もある。
発生中のヒト胎児は、免疫系を活性化させる可能性のある多様な分子(例えば、微生物や食物粒子)にさらされる。今回、Florent Ginhouxたちの研究グループは、妊娠中絶が臨床的に必要となった妊娠中期(妊娠14~22週)の胎児96例の組織を採取して調べ、最も早くて妊娠中期の胎児に免疫学的に活性な細胞が存在していることを明らかにした。この胎児の樹状細胞は、病原体を感知するとともにT細胞を刺激でき、免疫応答を開始させる能力を有していることが示された。ところが、この樹状細胞は、抗原にさらされると、全く逆の作用をして、免疫応答を抑制する一部のT細胞の活性を刺激した。
今回の研究結果は、ヒト胎児には免疫応答を開始させる能力が備わっていないという定説に疑問を投げかけており、この期間中に起こることが良く知られた免疫寛容を説明するためにも役立つ。また、今回の結果は、子宮内幹細胞移植のタイミングの目安として役立つ可能性もある。子宮内幹細胞移植は、免疫欠如、代謝異常などさまざまな疾患の治療処置となる可能性を秘めている。
doi:10.1038/nature22795
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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