藻類で、トラブルなく油が倍増
Nature Biotechnology
2017年6月20日
藻類の遺伝子組み換え株が、元の親株に比べて2倍の脂質を生産し、しかも親株と同様な速度で生育できるという報告が寄せられている。この知見は、微細藻類由来の持続可能なバイオ燃料の商業生産につながる一歩となる。
光合成を行う微細藻類(顕微鏡サイズの微生物で、光と水、CO2を使って成長し、脂質を生産する)が生産した脂肪や油を利用してバイオディーゼル燃料を生産し、石油系の輸送用燃料を補完しようという発想のもと、1970年代後半から盛んに研究が行われてきた。これまで、微細藻類を遺伝子操作して脂質を多く生産させる試みは、商業化に不十分な量しか生産できない工業用株に限って行われてきた。工業用の微細藻類Nannocholoropsis gaditanaは、実験室株の最大6倍もの脂質を生産できるが、何十年も研究が続けられてきたものの、Nannocholoropsis sp.の脂質生産性を改善すると、必ずそれに伴って生育が悪くなり、期待されたNannocholoropsis属の商業化は実現していなかった。
Eric Moelleringたちは、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術など、いくつかの組換え手法を利用して、N. gaditanaの工業用株の脂質蓄積を調節する遺伝子ZnCysを同定した。このZnCysを改変したところ、脂質の生産性が倍増(最大で1日あたり5g/メートル)したが、生育は改変していない親株とほぼ同等だった。微細藻類の生育能力を維持しつつ脂質生産量を増やす方法が分かったことは、微細藻類の光合成による脂質生産に向けた一歩前進である。これで、陸生植物の生産する糖類に依存したバイオディーゼル燃料が必要なくなるかもしれない。
doi:10.1038/nbt.3865
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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