クジラの小型化は個体群崩壊を知らせる
Nature Ecology & Evolution
2017年6月23日
20世紀中に商業捕鯨によって惹起・促進されたクジラ資源の世界的急減は、クジラの個体サイズの変化を追跡すれば予測することができたかもしれない、という知見をもたらす論文が発表される。世界のクジラ資源にとって、このレトロスペクティブ分析は遅きに失したものであるが、個体群崩壊に関する確かな初期的警告シグナルとして個体サイズデータを利用することは、現在の魚類資源の健全性評価に役立てることが可能と考えられる。
商業捕鯨は、18世紀および19世紀には盛んに行われ、乱獲で資源の枯渇が進むにつれてさらに多くの種がクジラ漁業に利用されるようになった。現在、捕鯨船団の規模はかつてのようなものではなくなっているが、個体群崩壊が起こる時期を確実に予測する能力は、商業利用される野生魚類資源の持続可能な管理を図る上で、今なお極めて重要である。
1900年以降、世界的な捕鯨モラトリアムが初めて実施された1985年までの期間について、商業捕鯨船で捕獲されたクジラ4種の個体数および個体サイズに関する歴史的データが収集されており、Christopher Clementsたちは、そこに切迫した崩壊のシグナルが表れているかどうかを調べた。その結果、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、およびマッコウクジラの平均個体サイズは、いずれも20世紀の後半に急速に小型化しており、最も小型化が急激であったマッコウクジラでは、1905年と比較して1980年代の平均サイズが4メートル小さかった。この個体サイズの小型化に基づく初期的な警告シグナルは、クジラ資源の世界的急減の40年も前に検知することができた。
個体群の崩壊が考えられる時期を検知するためにかつて開発された方法を利用することにより、研究チームは、資源の商業性が低下して世界の漁獲圧が低下する中で、クジラ全4種の個体サイズの多様性も低下したことを明らかにした。
doi:10.1038/s41559-017-0188
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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