動物プランクトンの死が油田探査と結びつけられた
Nature Ecology & Evolution
2017年6月23日
重要な小型海洋甲殻類の広範な死は高圧エアガンを使用する水中調査と関係しているという知見が、このたび掲載される論文で明らかにされる。その研究は、海底油田の探査で常用されているそうした音波による調査を、音源から1 km以上のかなたで死ぬ動物プランクトンの2~3倍の増加と結びつけている。
人為的な水中のノイズは、海洋生物に影響を与えることが知られている。例えば、ソナーの使用は、クジラの行動の乱れと結びつけられている。しかし、食物網の下方に位置付けられている生物は、大型魚類および海洋哺乳類が食物として依存しているにもかかわらず、ノイズの影響があまり理解されていない。
Robert McCauley、Jayson Semmensたちは、タスマニア南部で実験的エアガンの周囲の水を採取することにより、海洋プランクトンに対する発震エアガン曝露の影響を評価した。その結果、エアガンを使用していない対照海域と比較して、発震直後の1時間に網で捕らえられた動物プランクトンの平均個体数は60%以上減少し、ノイズの後に発見される動物プランクトンの死骸は2~3倍に上った。
この減少はソナーによる測定でも確認され、非魚類生物が存在しない「穴」が音源から1 km以上かなたの海域に発見された。研究チームは、広く使用されているこの発震技術が海洋生物に与える影響を明らかにするために、一層の研究を緊急に行う必要があると主張している。
doi:10.1038/s41559-017-0195
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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