【進化】ネアンデルタール人の進化過程の手掛かりとなる古代のミトコンドリア
Nature Communications
2017年7月5日
ドイツ南西部で発見された古代のヒト族の大腿骨の化石に含まれていたミトコンドリアDNA(mtDNA)を解析したところ、このヒト族が他のネアンデルタール人から約27万年前に分岐していたことが分かった。この新知見により、アフリカのヒト族からネアンデルタール人への遺伝子流動に関する時間境界の精度が従来よりも高くなった。
核DNA分析に基づく推定によれば、765,000~550,000年前に現生人類がネアンデルタール人とデニソワ人から分岐したとされるが、mtDNA分析からは現生人類とネアンデルタール人との近縁性が明らかになっている。この食い違いの説明には、アフリカのヒト族から初期ネアンデルタール人への遺伝物質の移入事象(1つの種から別の種への遺伝子流動)が援用されるが、化石が少ないために不確実性が残っている。
今回、Cosimo Posth、Johannes Krauseたちの研究グループは、ドイツ南西部のホーレンシュタイン・シュターデル洞窟で発見された古代の大腿骨化石の完全なmtDNAゲノムを再構築した。このゲノム試料は、これまでに発見されたネアンデルタール人のmtDNAの中で最も古く分岐したmtDNA系統となった。今回の発見は、更新世後期のネアンデルタール人のmtDNAの起源が27万年以上前のアフリカのヒト族からの遺伝子流動であり、それより古いデニソワ人様mtDNA系統が置き換わった可能性のあることを示唆しており、ネアンデルタール人の進化に関する新たな手掛かりとなっている。その一方で、Posthたちは、核DNA分析によってネアンデルタール人、デニソワ人、現生人類の間のゲノム的関係に関するさらなる情報が得られる可能性があることを指摘しているが、ドイツで発見された大腿骨化石に含まれる核DNAの保存状態は悪く、完全な核DNAを採取することはできない。
doi:10.1038/ncomms16046
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