温暖な北極が北アメリカを凍えさせる
Nature Geoscience
2017年7月11日
近年の北極の気候が平均よりも温暖であることは、北アメリカに寒冷な冬と春をもたらしているとの報告が今週のオンライン版に掲載される。この研究は、このような寒冷な冬と春は北アメリカの生態系に植物成長の鈍化という影響を与え、それによりこのような生態系が吸収するCO2量を減少させていることを示している。
海洋の温度の経年変動が(エルニーニョ発生期間のように)気候と生産性に影響を及ぼしうることは長く知られてきたが、北極の温度はこれまでは北アメリカの植物生産性と関連付けられることはなかった。
Jong-Seong Kugたちは、ベーリング海の海面温度指標を解析して、北極の温度が高い年はアラスカ上空の大気循環の変化がそれに対応する変化を西部の循環に及ぼし、北米の大部分において顕著な寒冷化と大陸南部の乾燥をもたらすことを見いだした。彼らは、このように温度が低く降雨が少ない年は、穀物収穫高が平均1-4%減少すること、そして北アメリカ生態系のCO2吸収量がおよそ14%減少することを発見した。
著者たちの、平均よりも暖かい年の効果に関する調査は、気候変動よりは気候の変動度の効果に焦点を当てたものである。しかしながら、彼らは、(北極海の海氷が急速に減少したことに関連して)過去30年間の北極における経年変動度の強化が北アメリカの陸上生産性の減少をもたらした可能性があることを示唆している。
同時掲載のNews & Views記事でAna Bastosは、「今回見つかった関連性が今後数十年に北アメリカ生態系が吸収できる炭素量の減少を暗示しているかどうかは明らかではない」と述べている。
doi:10.1038/ngeo2986
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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