影響力の大きい気候データベースのバージョンアップ
Scientific Data
2017年7月12日
古気候の復元と気候モデルの作成に極めて重要なツールであるPAGES2k気温代理指標データベースのバージョン2.0.0が、今週発表される。これは、これまでで最も透明、完全で、十分に記述されたPAGES2kデータセットのリリースであり、西暦元年から現在までの気候の変化に関心を持つ気候研究者にとって重要な情報資源となる。
定期的な気象観測が行われる前の時代の全球的な気温に関する我々の知識は、いわゆる「代理指標」データ、つまり過去の気温に関する間接的な情報が得られる生物学的情報源と地質学的情報源に依存している。例えば、木の年輪は、気温の高い時期に間隔が大きくなるため、それぞれの木が生息していた時代の気温の変化を間接的に推定できる。PAGES2kデータベースには、木の年輪、サンゴ、氷河氷、海洋堆積物と湖沼堆積物などなどさまざまな情報源に由来する代理指標データが登録されている。
PAGES2kデータベース全体を利用した全球的な気温履歴の初期要約では、19世紀まで長期的な寒冷化傾向があり、その後、急激な温暖化傾向に転じたことが明らかになっている。この要約は、現在の気候研究の多くと一致している。また、こうした傾向は、制限のあった旧バージョンのPAGES2kデータベースを使って復元された地域レベルの気温パターンとも一致していることが明らかになった。
PAGES(Past Global Change、古環境の変遷研究計画)のデータベースの新しいバージョンには、Ocean2kプロジェクトによる海洋記録が初めて登録され、未発表のデータ記録と新しい詳細なメタデータも加わった。この新しいデータベースには、合計648か所で集めた692件の記録が集められており、データの収集源は、全ての大陸と海洋にわたっている。データは、PAGESコンソーシアムのメンバーが協力して、一貫性と透明性のある基準を用いて取捨選択され、十分に吟味されている。このデータベースの最終版は、「オープンデータ」として発表され、誰でもデータのダウンロードと利用ができるようになっている。データは、補助コードのついた標準化フォーマットで提供され、専門家にも市民科学者にも利用しやすいようにできている。
doi:10.1038/sdata.2017.88
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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