【神経科学】他人に与えると気分が良くなる脳内機構
Nature Communications
2017年7月12日
自分の懐が痛んでも他人に気前よく与える人は多いのだが、その理由は、気前が良くなると活性化する脳領域と幸福感に関係する脳領域が結びつくことである可能性を指摘する論文が、今週掲載される。
気前の良い行動は、さまざまな社会と文化で高く評価されているが、この行動は本人の資源を他人の利益のために投資することが関係する傾向があるため、標準的な経済理論で説明することは難しい。この点について、気前の良さに伴って増進される幸福感が気前の良さの動機だとする研究報告が既に存在する。
今回、Soyoung Parkたちは、気前の良い行動と幸福感を結びつける脳の機構について調べるため、50人の参加者に金銭消費課題を行わせて、その際の脳の活動を分析した。参加者には、4週間にわたって毎週25スイスフランが与えられることを告げた上で、その半数には、それが本人のために使うための金銭だと説明して、その使い道(例えば本人の食事)を書かせ、残りの半数には、他人のために使うための金銭だと説明して、使い道(例えば友人や配偶者に夕食をおごること)を書かせた。この実験で他人のために金銭を使うことを公約した参加者は、この課題とは独立した別の課題でも気前の良さを示し、主観的幸福感と関連する特定の脳領域の活動が増大した。
以上をまとめると、今回の研究結果で、公約に誘発された気前の良さと幸福感を結びつける脳領域が明らかになり、資源を自分のために使った方が自分の利益になるのに気前よく他人に与えるという非論理的な行動の理由を説明できる可能性が示唆されている。今回の研究では、他人に与えると幸福感が増すように脳領域が活性化することが分かったのだ。
doi:10.1038/ncomms15964
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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