【生物工学】CRISPR法を使って細菌のゲノムに画像と短編映画を記憶させる
Nature
2017年7月13日
CRISPR法を利用して、エドワード・マイブリッジの“Human and Animal Locomotion”による画像と短編動画が細菌のDNAにコードされた。生細胞内にデジタルデータを記憶させるための有望な媒体がDNAであることは既に実証されているが、それをさらに発展させたのが今回の研究だ。その成果を記述した論文が、今週掲載される。
2種類のタンパク質を用いて目的の細胞のDNAに遺伝コードを挿入するCRISPR法によって生細胞内に情報を転送できることが最近の研究で明らかになっているが、今回、Seth Shipmanたちの研究グループは、CRISPR法を用いて画像と短いGIF動画を大腸菌にコードして、そうした能力を実証した。このGIF動画には、“Human and Animal Locomotion”に含まれる雌馬Annie G.の全力疾走が写った36x26ピクセルの5コマが用いられた。Shipmanたちは、DNAの構成単位であるヌクレオチドを用いて、各画像の個々のピクセルと関係のあるコードを作り出した。GIF動画の場合には、1コマごとに生きた細菌に配列が送達され、送達順に大腸菌のゲノムに挿入された。大腸菌のゲノムに挿入されたデータは、DNA配列解読によって読み出すことができ、画像の復元は、ピクセルヌクレオチドコードを読み取ることで行われ、その精度は約90%だった。
今回の研究では、CRISPR法を利用して生細胞に実用的な量のデータを記録できる可能性が明確になっただけでなく、CRISPR法の機能に関する新たな知見も得られた。例えば、Shipmanたちは、ゲノムへのデータ転送に最適な配列を突き止めており、この知見は、CRISPR法の他の応用にとっての指針となる可能性がある。
doi:10.1038/nature23017
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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