【神経科学】食べ物に対する脳の応答をインスリンが変える
Nature Communications
2017年7月19日
鼻腔スプレーでインスリンを投与されると、同じ食べ物が以前ほどおいしく感じられなくなり、この効果に伴って、報酬処理に関与し、通常、食物と関連した快楽応答に関係する脳領域の活動が低下することが判明した。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
今回、Stefanie Brassenたちの研究グループは、一晩絶食した48人の参加者に空腹感の程度を自己申告させ、その後両方の鼻孔にインスリンまたはプラセボを投与した上で、食品の写真を見せて、どの程度おいしそうに感じられるかを評価させ、その評価を行う参加者の脳を機能的磁気共鳴画像法(fMRI)で撮像した。それぞれの参加者に対しては、インスリンでの実験とプラセボでの実験の両方が実施された。インスリンに対する感受性が日常的に高い者がインスリンの投与を受けた場合には、プラセボを投与された場合よりも食品が魅力的に感じられなくなり、食事や食品と関連する報酬を処理する脳領域の活動も低下していた。このような結果は、インスリン抵抗性を示す(が糖尿病ではない)参加者には見られなかった。おいしそうな食品と感じるかどうかの主観的評価も脳内の報酬もインスリンの投与によって影響を受けなかったのだ。
以上をまとめると、今回の研究結果では、脳内で食物と関連する報酬が処理される仕組みがインスリンによって変化し、食べ物が以前ほどおいしそうに感じられなくなることが示唆されている。また、インスリン抵抗性を示す者の方が魅力的な食べ物を我慢するのが難しい点については、今回の研究で分かった効果がインスリン抵抗性を示す者に生じないことが1つの理由になるかもしれない。
doi:10.1038/ncomms16052
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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