【ゲノミクス】小児脳腫瘍の解明が進む
Nature
2017年7月20日
最も一般的なタイプのがん性小児脳腫瘍である髄芽腫について詳細な遺伝的解析が行われ、新たな治療法の開発に役立つ可能性のある見識が得られた。この新知見について報告する論文が、今週掲載される。
髄芽腫の現在の治療法には好ましくない副作用があり、子どもの生活の質が損なわれることがある。また、髄芽腫はいくつかのサブタイプに分類され、それぞれ独自の臨床的特徴と治療法に対する臨床反応がある。従って、有毒な作用が少ない新たな標的療法を開発することが必要となっている。
今回、Paul Northcottたちの研究グループは、491例の髄芽腫のゲノム塩基配列を解析し、さらに別の1,256件の試料について遺伝子発現の変化を調べることで、髄芽腫の遺伝的基盤を評価した。その結果、髄芽腫の発生を促進する遺伝的変異が新たに発見された。その多くは特定のサブグループ、とりわけ解明の遅れているサブグループ(グループ3とグループ4)に特異的なものだった。このグループ3とグループ4を合わせると、髄芽腫全体の60%以上に相当する。また、Northcottたちが発見した遺伝的ドライバーと細胞経路の異常の一部は、新しい腫瘍サブタイプへの分類が可能で、これによって、髄芽腫を単一の実体ではなく、疾患群として捉えるべきであることが明らかになっている。
今回の研究で新規同定されたがん遺伝子と特定の髄芽腫サブタイプの独特な特徴は、髄芽腫の注目すべき治療標的となる可能性がある、とNorthcottたちは結論づけている。
doi:10.1038/nature22973
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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