【ウイルス】ジカウイルスの接触感染リスクの評価
Nature Communications
2017年8月2日
ジカウイルスは口から動物の体内に入って感染することが、非ヒト霊長類の研究によって明らかになり、ジカウイルスの接触感染が経口経路で起こることが示された。ただし、今回の研究では、感染動物の唾液が、未感染動物へのウイルス感染に不十分なことも明らかになっており、接触感染が唾液以外の体液を介して起こることが示唆されている。この研究結果について報告する論文が、今週掲載される。
ジカウイルスの主な感染経路は、蚊と性的接触であるが、その他に性的接触によらないヒトからヒトへの院内感染が少なくとも1例ある。ジカウイルスは、唾液、涙、汗、母乳など数々の体液から検出されている。非感染者への感染を引き起こした感染性ジカウイルスの発生源と感染経路は解明されていない。
今回、Thomas Friedrichたちの研究グループは、非ヒト霊長類における唾液によるジカウイルスの感染リスクを推定した。この研究では、非ヒト霊長類の扁桃腺に高用量投与されたジカウイルスの感染が拡大したことが明らかになった。この場合の血中ウイルス量と尿中ウイルス量は、ジカウイルスを皮下注射した後のウイルス量に近く、経口経路によるジカウイルスの感染が起こりうることが示唆された。しかし、この研究では、感染動物の唾液を非感染動物の眼、鼻または扁桃腺に投与してもそれだけではウイルス感染に不十分なことも明らかになった。この結果は、唾液によるジカウイルス感染のリスクが低いことを示唆している。
ジカウイルスの接触感染をさらに詳しく評価するためには研究を重ねる必要があるが、今回の研究では、ジカウイルスの経口摂取量が十分に多ければ、経口経路によるウイルス感染が起こりうることが示唆されている。今回の研究結果は、集団内でのジカウイルスの感染拡大過程の解明に重要な意味を持つ可能性がある。
doi:10.1038/s41467-017-00246-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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