【神経科学】睡眠中の学習が可能な睡眠相とは
Nature Communications
2017年8月9日
睡眠中に新たな記憶が形成される可能性があるのは特定の睡眠相だけであり、具体的には、レム(REM)睡眠時と浅いノンレム(NREM)睡眠時には学習が起こりやすいが、深いノンレム睡眠時には新たな情報の学習能力を抑制する効果が生じることが明らかになった。この新知見は、それぞれの睡眠相の機能に関する理解を深める上で役立つと考えられる。この研究結果を報告する論文が、今週掲載される。
睡眠中の学習が可能かどうかを調べる研究は、これまでも行われてきているが、睡眠中の学習が可能なことを実証したものと睡眠中の新規記憶形成の証拠を示せなかったものがあり、結論の一致が見られない。今回、Thomas Andrillonたちの研究チームは、この結論の不一致が、脳活動の種類が睡眠相によって異なるという事実によるものと考え、そのために被験者が学習できる場合とできない場合が生じる可能性があるという仮説を提起した。Andrillonたちは、この仮説を検証するため、睡眠中の被験者の脳活動を測定し、被験者にさまざまな音系列を聞かせた。そして被験者が目を覚ました後、睡眠中に聞いた音をどの程度はっきりと認知できるのかを検査した。REM睡眠時に音系列を聞いた被験者は、この検査の成績が良好だったが、NREM睡眠時に音を聞いた被験者は、成績が悪かった。また、Andrillonたちは、夜間における被験者の音に対する応答を解析し、REM睡眠時における学習効果を確認した。一方、NREM睡眠時については、浅い眠りと深い眠りで明確な違いのあることが観察され、眠りが浅いと睡眠中の学習は可能だったが、眠りが深いと学習は抑制された。
以上をまとめると、今回の研究結果は、睡眠中の学習が可能なことを明らかにしただけでなく、一般的な記憶過程とそれが睡眠相によって異なる点の解明にも役立っている。
doi:10.1038/s41467-017-00071-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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