【環境】全球的な干ばつからの回復パターン
Nature
2017年8月10日
干ばつからの回復期間は、さまざまな生態系において気候サイクルと炭素循環のダイナミクスと強く関連していることを明らかにした論文が、今週掲載される。干ばつは、繰り返し発生して人間と自然界の系に大きな影響を及ぼす現象であり、「陸域の炭素シンク」(大気から二酸化炭素を吸収し貯蔵する能力)に負の影響を与える極端な気候として最も広範に観測されている。
回復期間は、干ばつに見舞われた生態系が干ばつ以前の機能状態に戻るまでの時間的長さを測る極めて重要な干ばつの影響に関する指標だ。しかし、干ばつからの回復に影響を及ぼす要因については、ほとんど解明されていない。
今回、Christopher Schwalmたちの研究グループは、衛星画像と陸面モデル、機械学習、微気象観測タワー拠点のネットワークによる分析結果を併用して、さまざまな生態系の評価を行った。そのデータによれば、干ばつからの回復期間と最も強く関連する要因が干ばつ後の気温条件と降水条件であり、干ばつ後の気温が高いと干ばつからの回復期間が長くなることが明らかになった。また、降水量と気温ほどではないが、生物多様性と大気中の二酸化炭素濃度の違いも回復期間に影響を与えていた。
Schwalmたちの分析では、熱帯地域と北半球高緯度域(特に地球の気候システムにおける最も脆弱な地域であるロシア極東とアラスカ)での回復期間が最も長く、20世紀を通じて干ばつの影響が増大したことが明らかになった。もし干ばつの頻度が予想通りに上昇すれば、干ばつからの回復期間より短い間隔で干ばつが発生するようになり、生態系の破壊が回復不能となり、陸域の炭素シンクの状態が低下する可能性がある。
doi:10.1038/nature23021
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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