【薬理学】合成精神活性薬に対するワクチン
Nature
2017年8月17日
このほど実施されたマウスの研究で、合成精神刺激薬「フェネチリン」の中毒作用を緩和し、その化学的活性成分を同定できるワクチンが実証されたことを報告する論文が、今週掲載される。これまでにもフェネチリン特有の特性が急激に発生する原因となる特定の成分を同定することを目指した研究が行われたが、フェネチリンの独特な化学的複雑さのために成果が上がらなかった。
フェネチリン(商品名「カプタゴン」)は、中東での物質乱用と「薬理学的テロリズム」に関係している。サウジアラビアでは、12~22歳の薬物使用者の40%がフェネチリン中毒だと推定されている。
Kim Jandaたちの研究グループは、フェネチリンの各成分のワクチン投与を行ってフェネチリンの行動的影響の原因となる成分を解明することを目的とするDISSECTIVという「ワクチン投与による解析法」を開発した。過去のDISSECTIVを用いた研究では、古くから呼吸器疾患の治療薬として用いられてきたテオフィリンと興奮剤アンフェタミンとの機能的相乗作用が同定され、これらの薬剤がフェネチリン特有の作用の原因化学物質であることが明らかになっている。今回の研究ではDISSECTIVが用いられて、研究0日目、14日目、28日目にマウスに対してフェネチリンの各成分のワクチンの増分投与が実施され、フェネチリンの薬力学的作用が弱まった。このJandaたちの研究結果で、多成分混合体に含まれる単一の化学種に対するワクチンの増分投与を使って、複数の標的経路や疾患経路に作用する薬物の特性を解明できることが実証された。Jandaたちは、DISSECTIVを用いて医薬品に含まれる未知の活性化学種を明らかにし、複合剤の相互作用の仕組みを解明できるという考えを示している。
doi:10.1038/nature23464
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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