【化学】ウイスキーを水で希釈すると味わいが増す仕組み
Scientific Reports
2017年8月18日
ウイスキーを水で希釈すると味わいが増す理由を説明した論文が、今週掲載される。
ウイスキーの味わいは、主として両親媒性分子(親水基と疎水基の両方を持つ分子)、例えばグアイアコールが関係している。ウイスキーは、瓶詰めされる前に水が添加されてアルコール含有量が約40%になるまで希釈されるが、この希釈によってウイスキーの味わいは著しく変化する。ウイスキーの愛好家は、こうしたウイスキーを飲む前に数滴の水を加えて味わいをさらに際立たせることが多いが、水による希釈で味わいが増す仕組みと理由は明らかになっていない。
今回、Bjorn KarlssonとRan Friedmanは、グアイアコールを含む水-エタノール混合物のコンピューターシミュレーションを行って、グアイアコールの相互作用を調べた。その結果、グアイアコールが、エタノールと選択的に結合し、エタノール含有量が45%に達するまでは混合物のほぼ全体ではなく気液界面に存在している可能性の高いことが分かった。従ってグラスに注がれたウイスキーに含まれるグアイアコールはウイスキーの表面近くに集まり、ウイスキーの香りと味わいに寄与しているとKarlssonたちは考えている。また、アルコール含有量が59%を超えるとエタノールとグアイアコールの相互作用が増強されたことが確認されたが、このことはグアイアコール分子が混合物の表面から離れて混合物のほぼ全体に分布するようになることを意味する。以上の新知見は、ウイスキーが瓶詰めされる前に希釈されることでウイスキーに含まれるグアイアコールとそれに類似した化合物の味わいが増し、グラスに注がれたウイスキーをさらに希釈すると味わいが際立つ可能性のあることを示唆している。
doi:10.1038/s41598-017-06423-5
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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