【健康科学】農業用殺虫剤への曝露によって生じるリスクの推定
Nature Communications
2017年8月30日
妊娠中に農業用殺虫剤に曝露された母親から生まれた子どもには悪い影響が出る可能性があるが、それは非常に高いレベルの曝露があった場合に限られるという研究結果を報告する論文が、今週掲載される。この新知見は、サンホアキン・バレー地域(米国カリフォルニア州)で収集されたデータセットを評価して得られたもので、農業用殺虫剤に関連する出生異常を減らす政策の対象として恩恵を受ける可能性のある小規模な集団を明らかにしている。
これまでの研究では、殺虫剤による健康への悪影響が農業従事者に出ていることが明らかになっているが、農業地域の周辺住民がどのような影響を受けているのかは明らかになっていない。今回、Ashley Larsenたちの研究グループは、農業中心のサンホアキン・バレー地域における1997~2011年の約50万人の出生記録と殺虫剤の使用量を分析して、殺虫剤への曝露と出産結果の関係を調べた。この研究では、出産結果として出生時体重、妊娠期間、出生異常に着目した。
今回の研究で、妊娠中に殺虫剤が非常に大量に使用された状態(サンプル全体の上位5%、または殺虫剤の使用量が4200 kg以上)に曝露された場合、出産結果(出生時体重、妊娠期間、出生異常に関連するもの)に悪影響が生じる確率が5~9%上昇することが明らかになった。Larsenたちは、リスクの最も高い人々に的を絞った政策介入を実施することで、殺虫剤に関連する出生異常を効果的に減らせる可能性がある、という考えを示している。
doi:10.1038/s41467-017-00349-2
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