【微生物学】腸内微生物相による健康管理の仕組み
Nature
2017年8月31日
腸内細菌が産生するN-アシルアミドという低分子有機化合物は、いろいろな受容体との相互作用によって人間の健康と生理機能に関与していることを示唆する研究論文が、今週掲載される。N-アシルアミドは、ヒトシグナル伝達分子の重要なクラスに分類され、免疫、行動、代謝などの生理機能のさまざまな側面に関係していると考えられてきた。
ヒトのマイクロバイオームは、生理機能と健康に重要な役割を果たすと考えられているが、その基盤となる機構についての解明は進んでいない。細菌は、低分子を使って周辺環境と相互作用するが、ヒトの微生物相も低分子を使ってヒト宿主と相互作用しているという仮説が提唱されている。しかし、それに関係している可能性のある分子の特定とその機能の仕方の解明はなされていない。
今回、Sean Bradyたちの研究グループは、ヒトの腸内細菌によって産生されるN-アシルアミドが5種類のヒトGタンパク質共役受容体(GPCR、一般的な薬剤標的である膜タンパク質ファミリーの1つ)と相互作用することを報告している。Bradyたちは、マウスと細胞のデータを解析して、こうした細菌の代謝産物がGPCR の一種であるGPR119を活性化させて、マウスの代謝ホルモンとグルコース恒常性を調節する能力を有することを明らかにした。今回の研究結果からは、微生物相によって産生される低分子が細菌のシグナル伝達分子を模倣でき、この模倣が将来的に糖尿病、肥満などの疾患の治療に利用できる方法となる可能性のあることが示唆されている。
doi:10.1038/nature23874
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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