Research Press Release
【進化学】魚も1匹では生きていけない
Nature
2017年8月31日
島嶼部周辺における海洋動物の分布は、陸生動物の個体群動態に影響を及ぼす過程とは異なる過程によって決まるという考えを示した論文が、今週掲載される。これまで島嶼生物地理学(島嶼部における生物種の分布の時間的変化を調べる研究)の関心は、島嶼部に生息する陸生生物に集まっていたが、今回の研究において新たに行われた分析で、海洋群集における種の多様性に影響を及ぼす要因に光が当たった。
今回、Hudson Pinheiroたちの研究グループは、島嶼部の水生環境を形作るさまざまな過程を詳しく解明するためにブラジル沖の火山性海山列と島嶼部においてサンゴ礁魚類10種の進化史を調べた。海水準変動は、海洋での種分化に影響を与えていたことが判明したが、同じことは陸生種にも見られた。しかし、Pinheiroたちは、魚類は陸生生物よりも分散能力が高く、陸生生物と異なり、移住によってニッチの大半を占有して、生息地での多様化を防止していたことを指摘している。そして、時間の経過とともに分散能力の低い生物種がランダムに蓄積すると海洋生物の種分化速度が上昇した。従って、島嶼部の地理と地質史と海水準変動が海洋生物の多様化に及ぼす影響は、若干の類似性はあるものの、陸生生物に対する影響の仕方とは異なっている、とPinheiroたちは結論付けている。
doi:10.1038/nature23680
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