Research Press Release
血管構築を誘導する
Nature Cell Biology
2011年5月16日
発生の際の血管成長の方向は別々のシグナル伝達によって制御されていることが報告された。この知見は、増殖中のがん細胞への血液補給を停止させるような薬剤の開発に役立つ可能性がある。
脊椎動物の発生の際には、背側大動脈と心臓の前心静脈がループを形成し、これによって各臓器に確実に酸素が送達されるようになる。成熟した循環系は、これらの未発達な血管から互いに反対の方向に血管が萌芽・分枝していくことで拡大し、構築されていく。S-W Jinたちはゼブラフィッシュをモデル系として使って、発生の際の血管成長の方向はそれぞれ別のシグナル伝達によって制御されていることを見いだした。大動脈から分枝する血管は増殖因子のVegf-Aに応じて一定の方向にのびるが、Vegf-Aは前心静脈からのびる血管には影響を与えないことが示された。また、前心静脈からこれと反対方向へ伸びていく血管の萌芽・分枝は、BMP分子によって誘導されるまた別のシグナル伝達経路に応じて起こることもわかった。
がん細胞は固有の血管系を形成して酸素補給を確保するので、発生の間の血管増殖の基本的機構の解明は、悪性細胞への血液補給を特異的に遮断する薬剤を作製するのにつながる可能性がある。
doi:10.1038/ncb2232
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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