【生理学】マウスの妊娠が成功裏に導かれるかどうかには子宮年齢が関係している
Nature Communications
2017年9月6日
マウスを使った研究で、胚の着床と出産の転帰が子宮の年齢によって左右されることが判明した。この研究結果について報告する論文が、今週掲載される。これまでの研究では、加齢に伴う妊娠合併症の原因として卵子の異常に着目されていたが、今回の研究によって得られた新知見は、これまで正当に評価されてこなかった母体環境の役割に光を当てている。
母体の年齢は、繁殖の成功に対するリスク因子であることが知られており、加齢に伴う卵子の異常は、胎仔の染色体異常を引き起こし、それが妊娠初期の流産につながることがある。今回、Myriam Hembergerたちの研究グループは、マウスを使った研究で、妊娠中期以降の妊娠合併症(例えば流産や周産期死亡)の原因となり得るものを明らかにした。母マウスの年齢が高くなると、胎仔の健康状態と生存率が低下することが分かったのだ。発育の遅れや心臓の異常などの問題が発生したが、それらは子宮内で胎仔の成長を支える胎盤の異常と関係していた。Hembergerたちは、胎仔を高齢の母体から若齢の母体に移すことで、これらの問題を直せることを実証した。このことは、子宮が胎盤と胎仔の健康を維持する能力が年齢とともに低下することを示している。子宮の老化は、脱落膜(胎盤と相互作用して胎仔の成長と発達を支える子宮内構造体)の免疫細胞の減少と関連している。また、脱落膜の形成を促進するホルモンに対する応答性が、子宮内の細胞の方が低いことも判明した。
この研究結果は、マウスにおいて母体の年齢(卵子の齢だけでなく、母体の子宮年齢)が胎仔の生存に影響を及ぼすことによって胎仔の健康と生存を確実なものとしていることを明らかにしている。ただし、これはマウスの研究であり、ヒトにもそうした機構が存在していることを示す証拠は得られていない点に留意する必要がある。
doi:10.1038/s41467-017-00308-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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