空を使って温度を下げる受動冷却
Nature Energy
2017年9月5日
水を受動的に冷却して周囲の大気温度より最大で5℃低くでき、商業建築物の冷房に必要な電力量を約20%削減できる可能性のあるシステムが、今週のNature Energyオンライン版に掲載された論文で報告されている。
空調は、建築物のエネルギー消費のかなりの割合を占めている。典型的な空調システムは、凝縮器を使って循環する空気を冷却するため、電力を消費し局所環境を暖める。空調システムのエネルギー使用量を減らす方法が見つかれば、コストや温室効果ガス排出量が削減され、局所的な微気候に対する建築物の影響が小さくなる可能性がある。
今回、E Goldstein、A Raman、S Fanは、排熱して冷却を行うのに空を使い、循環装置以外にエネルギーを必要としない代替システムを開発した。このシステムは、特別に設計され、放射冷却と呼ばれる機構を通して赤外光を大気や宇宙空間に直接放射するパネルを用いている。著者たちは、カリフォルニア州スタンフォードにおいて屋上に設置したこのパネルに流体(今回は水)をポンプで通し、放射冷却を利用して3~5℃冷却できることを見いだした。次に彼らは、典型的な空調システムに組み込んだ場合のこのパネルの挙動をモデル化した。その結果、ラスベガスの2階建ての商業建築物にある蒸気圧縮を用いた空調システムの凝縮器から熱を除去するのにこのパネルを使えば、典型的な年の5月から8月の冷房に必要な電力が21%削減されることが示された。商業的可能性を見極め、この技術を最適化するには、さらに試験を行う必要がある。
関連するNews & ViewsでG SmithとA Gentleは、「空にある2つのヒートシンクは、冷却効率を高めるのに非常に魅力的で、Goldsteinたちの実証結果を受けて、それが今回利用できるようになり始めた」と述べている。
doi:10.1038/nenergy.2017.143
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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