エネルギー消費から明らかになった中国の農村部における不平等
Nature Energy
2017年9月26日
中国の農村部では、より優れたエネルギー・インフラを利用できても、エネルギーの不平等が緩和されていないことを示した論文が、今週報告される。この研究は、耐久消費財を所有することの価値だけでなく利用することの価値にも基づいて、安定しているとともに容易に定量化できる直接的な不平等尺度として家庭のエネルギー消費量に光を当てている。
C Weiたちは、調理、家庭用電気製品への電力供給、給湯、暖房、冷房という5つの活動に重点を置いて、中国の農村部のエネルギー消費量について全国の家庭の調査を行った。その結果、エネルギー消費の観点から測った不平等は、家計の収入や支出のデータに基づく不平等尺度とは系統的に異なり、エネルギーの不平等は収入ベースの不平等よりばらつきが大きいことが分かった。彼らは、バイオマスからエネルギーを得ること、暖房や調理のためのエネルギーの利用、地域内格差が、中国農村部におけるエネルギー消費の不平等の主要原因であることを示している。
著者たちは、家庭の収入などの不平等尺度は、短期的変動の影響を受け、利用できる家庭の資産を十分に反映していない可能性があるため、限定的であると示唆している。今回の研究は、不平等のより直接的な尺度としてエネルギー消費量データを用いることによって、エネルギー助成金とインフラ拡大は、エネルギーの不平等の縮小に十分ではなく、手ごろな価格のエネルギーや、バイオマスから他の近代的エネルギー源への移行の促進に政策の重点を置くべきであることを示している。
doi:10.1038/s41560-017-0003-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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