人生の明るい面を見ながら
Nature Neuroscience
2011年10月10日
人は物事が期待していたよりよくなることがわかると自分の考えを正しく改めるが、期待していたより悪くなるときはそうしないらしい。神経活動もこれに対応しており、以前より改善する物事に対するフィードバックはきちんと符号化するが、予想外によくない情報は符号化しにくい。
T Sharotらは、被験者に生活上の有害な出来事(例えば、アルツハイマー病にかかる、強盗に遭うなど)の一覧表を見せ、将来これらの出来事がどれくらい起こりそうかそれぞれ見積もらせた後、実際の統計的確率を提示した。最後に、被験者に同じ出来事の起こる見込みを再評価してもらい、実際の確率をフィードバックすることでその見積もりがどのように変化するのか評価した。
著者らによると、被験者はフィードバックによって現実的には有害な出来事を経験する可能性が当初見積もっていたより小さいことが示されると評価を変える場合がはるかに多いことがわかった。逆に当初の評価より有害な出来事がずっと起こりやすいと知らされると、元の正しくない評価のままにする傾向があった。
研究チームはさらにこの課題遂行中の脳活動を観察し、脳の前頭部の活動は行動に対応して、物事が予想よりよかったときの評価のずれを正確に探知するが、実際に思っていたよりも悪かったときの評価のずれは探知しにくいことを発見している。
これらの結果から浮き彫りになるのは、ヒトの脳には「楽観バイアス」が生来備わっていると思われることで、このバイアスは世界に関する正確な 情報取得に対し抵抗する。
doi:10.1038/nn.2949
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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