【工学】スーパーコンピューターを利用した構造設計を航空機の翼に応用する
Nature
2017年10月5日
原寸大の航空機の翼の内部構造を最も詳細に最適化できるスーパーコンピューター利用ツールについて記述された論文が、今週掲載される。
工学分野では、性能を最大限に引き出し、重量や費用を最小限に抑えるといった特定の目標を達成する可能な限り最善の形状や材料分布を決定するため、コンピューター利用の形態形成という技術が用いられている。この分野におけるトポロジー最適化には、あらかじめ決められた設計ドメイン内での材料の再分布が関係しており、それは自然な骨の成長に似ている。従来のトポロジー最適化は、特に自動車産業と航空宇宙産業で一般的に使用されている。ただし、この方法は、分解能に一定の限界があるため、部品や単純な構造物の設計への利用に限られている。
今回、Niels Aageたちの研究グループが開発したスーパーコンピューターによる形態形成ツールは、10億ボクセル以上が関係するギガボクセルの分解能で設計を生成できる。(ボクセルはピクセルを立体化した三次元の画素である。)この分解能は、現在利用可能な方法の約500万ボクセルの設計分解能をはるかに超えており、その結果として材料の再分布が改善される。次にAageたちは、このツールを実証するために、荷重を支える航空機の翼の内部構造の設計に適用した。そしてAageたちは、最適設計によって現在の翼と比べて2~5%(翼当たり200~500キログラムに相当)の軽量化を図れることを示した。また、この軽量化を燃料の節約に換算すると、航空機1機当たり年間40~200トンの燃料が節約できる可能性のあることが示唆されている。Aageたちは、現時点でこの設計は実現可能ではない点に注意を要するとしつつ、風力タービンの翼と塔、送電用鉄塔、橋などの構造物の将来的な設計アプローチに着想を与えるようになってほしいと考えている。
doi:10.1038/nature23911
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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