【工学】極高温の液体スズを循環させるポンプ
Nature
2017年10月12日
最高1673ケルビン(摂氏1400度)の液体スズを絶えず循環させるセラミック製の機械式ポンプについて報告する論文が、今週掲載される。溶融金属は、極度の高温状態で、エネルギーを効率的に貯蔵し、輸送するための媒体になり得る。しかし、極度の高温で液体金属を操作することが難題であることは、数多くの応用例で判明している。
熱は、ほとんど全てのエネルギー変換過程の産物あるいは副産物として発生し、最も大量に存在するエネルギー形態の1つだ。熱エネルギーは、発電と数多くの工業プロセスにとって必須であり、その価値は高温状態で最大限引き出すことができる。液体金属は、非常に効率の高い伝熱流体となり得るが、高温での液体金属の汲み上げは、ポンプ材料の腐食のために極めて困難だった。高温の流体が効果的に活用される場合(例えば、ガスタービン、ロケットエンジン)であっても、その系におけるポンプの温度は比較的低く抑えられている。
今回、Asegun Henryたちの研究グループは、通常は脆弱なセラミックを慎重に設計することで、1673ケルビンという記録的な最高温度で連続運転できる溶融金属ポンプの機械部品と密封部品を構築できることを明らかにした。Henryたちの研究アプローチは、2つの非常に重要な課題の克服に集中することであり、具体的には、壊れやすいセラミックを回転機械に使用することと1300ケルビン以上の液体スズを密封できる能力を実証することだった。Henryたちのポンプシステムの試作品は、リザーバーと目視流量計、必要な配管と継ぎ手からなり、72時間の試験運転で良好な結果が得られた。この試験運転では、平均温度1473ケルビン(最高1673ケルビン)の溶融スズの汲み上げが行われ、故障が起きなかった。このように記録的な高温度域の流体を使って効果的な熱伝達と蓄熱を行う新しいシステムは、熱エネルギー貯蔵や発電、化学処理、材料加工における技術革新を可能にすると考えられる。
doi:10.1038/nature24054
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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