【疫学】病気を媒介する蚊の監視は一般市民がスマホアプリで行う
Nature Communications
2017年10月25日
一般市民がスマホのアプリを使って病気を媒介する蚊の追跡調査に協力することが可能になり、この市民科学的アプローチが従来の監視方法に代わるスケーラブルな方法になりうることを報告する論文が、今週掲載される。今回、このアプローチによってヒトスジシマカ(Aedes albopictus)の監視が行われた。ヒトスジシマカは、数種類のアルボウイルス(ジカ、デング、チクングンヤを含む)を媒介する昆虫で、この30年間に西太平洋諸国と東南アジアからヨーロッパ、アフリカ、中東、北米・中南米へ拡散した。
蚊の媒介する病気(例えば、ジカ熱、チクングンヤ熱、デング熱を含む)が近年流行して、この数十年間に自然の生息域から拡散した蚊種の侵略と地理的拡大を監視することの重要性が明確に示された。今回、John Palmerたちの研究グループは、2014~2015年にスペインで実施された一般市民によるヒトスジシマカの目撃報告に基づく“Mosquito Alert”というスマホアプリを用いたヒトスジシマカの監視活動を評価した。この研究では、こうした報告(約5000件)と同時期にスペインで監視対象となったほぼ全てのオビトラップ(蚊の卵の簡易捕獲器)から集めたデータの比較が行われた。Palmerたちは、この市民科学的アプローチの方が、現場の専門家が蚊の卵が監視する従来の方法よりも低コストで実施でき、監視の質は互角で、地理的範囲の点で優っていることを報告している。
この監視活動の参加希望者は、“Mosquito Alert”を使ってヒトスジシマカの目撃報告ができ、このアプリは、それぞれの目撃報告の正確な時刻と位置に関する情報を自動的に付加する。全ての目撃報告(添付画像を含む)については、昆虫学者チームによる精査と妥当性確認が行われ、その後に観察データが公表されて、研究や公衆衛生管理対策の策定に利用できるようになる。
doi:10.1038/s41467-017-00914-9
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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