【気候科学】氷床と火山活動の関わり
Nature Communications
2017年10月25日
古代の氷床が急激に融解する現象を引き起こしたのは、過去の火山噴火だったことを明らかにした論文が、今週掲載される。この新知見は、火山灰が氷の表面に堆積することで、全球の海水準上昇に対する氷床の融解水の寄与度が高まる可能性があることを示唆している。
火山の噴火と大気中への火山灰の放出は、一般に気候に対する冷却効果があるが、火山活動が古い氷床にどのような影響を及ぼすのかについてはほとんど分かっていない。こうした強制力に対する氷床の応答を解明することは、海水準上昇に対する氷床の融解の寄与可能性を十分に理解する上で大事だ。
今回、Francesco Muschitielloたちの研究グループは、1万3000年前の最終退氷期におけるスウェーデンの湖沼堆積物とグリーンランドの氷床の年層記録を厳密に比較することで、この論点を解明するための手掛かりを得た。この堆積物の記録には、フェノスカンジア氷床の融解現象が記録されており、特筆すべき点は、1万3000~1万2000年前の氷床に記録されていた爆発的で硫黄を多く含む火山活動を示す徴候に対応していることだ。最終退氷期に起こったアイスランドでの火山活動は、現代の50倍の規模だった。Muschitielloたちは、この火山活動が、フェノスカンジア氷床の融解現象の原因である可能性が高く、黒ずんだ火山灰が明るく輝く氷の表面に堆積して、熱の吸収量が増え、氷の融解が促進されるという仕組みだったと結論付けている。
doi:10.1038/s41467-017-01273-1
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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