【遺伝学】自閉症スペクトラム障害の影響因子に関する新知見
Nature Communications
2017年10月25日
自閉症スペクトラム障害(ASD)の発症に寄与する生物学的過程に関するヒントが見つかったことを報告する論文が、今週掲載される。エピゲノム(遺伝子の発現状態を変え、環境的要因によって修飾されるゲノム上のマーカーの集合体)に関する情報が疾患の発症を解明する上でどのような寄与をするのかを調べたのが今回の研究であり、血液検査と脳生検によって得られた遺伝的情報とエピジェネティクス情報を統合して、ASDの発症に影響を及ぼす諸因子の枠組みが示されている。
今回、Daniele Fallin、Christine Ladd-Acostaたちの研究グループは、ASDに対する遺伝的要因とエピジェネティック要因の影響可能性を調べるため、ASDの子どものいる家系のヒト遺伝学研究によって得られたデータを集積した上で、ヒトエピジェネティクス研究によるデータと統合した。そして、Fallinたちは、さまざまな試料(臍帯血、末梢血、脳)から収集した遺伝的データとエピジェネティクスデータのデータセットを組み合わせて、これまでに同定されているASD遺伝子と関連するエピジェネティックな変化を同定した。こうしたエピジェネティックな変化が生じた遺伝子の位置からは、遺伝的研究だけでは明らかにならなかったASD遺伝子による発達阻害過程に関する新しい生物学上の仮説が生まれている。重要なのは、末梢血のエピジェネティクス情報を用いて得られた手掛かりと脳試料から得られた手掛かりの重複に有意性が認められることだ。このように血液による試料の価値が明らかになったことで、ヒトの一生におけるエピジェネティック標識に関する新たな研究の可能性が開かれた。脳組織の研究は死後検体を使って行うことしかできないからだ。
doi:10.1038/s41467-017-00868-y
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