【材料科学】見えないインクを発光させる方法
Nature Communications
2017年11月1日
見えないインクで書かれた文字を読めるようにする新しい方法が実証され、機密情報の保護への応用が期待されている。この研究成果について報告する論文が、今週掲載される。
見えないインクは、必要に応じて発光、消光して、機密情報の暗号化と復号ができるようになっている。そうしたインクの一部は、化学物質や光、熱によって発光特性が変化するが、今までに開発された見えないインクは、消光状態でも全く見えないわけではなかった。これは、情報の暗号化にとって極めて重要な特性だ。
今回、Liang Liたちの研究グループは、無色の鉛系化合物に単純な化学構造の引き金物質を添加することで発光体への可逆的な変換を実現できることを明らかにした。この発光体をインクジェットプリンターに使用して硫酸紙に文字列と文様を印刷する実験では、可視光と紫外光のいずれを当てても印刷された文字列と文様は見えなかった。次に、この発光体に塩を添加したところ、発光体の化学組成が変化して、紫外線ランプを照らすと明るく発光するようになった。その後、同じ塩を再び添加すると、この発光体は元の状態に戻り、その結果、情報の暗号化と復号のサイクルを複数回繰り返すことができた。
Liたちは、鉛系材料の毒性作用についての検討が必要な点を指摘しつつ、無鉛の代替品の設計が可能かもしれないという考えを示しており、今回の研究で見つかった方法が、機密保持のための見えないインクの製造に役立つ可能性があると述べている。
doi:10.1038/s41467-017-01248-2
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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