【進化学】ネアンデルタール人はそんなに簡単にいなくなったのだろうか?
Nature Communications
2017年11月1日
現生人類がネアンデルタール人に取って代わったことは、現生人類のアフリカからユーラシアへの移住動態によって十分に説明できると示唆するモデルについて記述された論文が、今週掲載される。ネアンデルタール人が絶滅した原因をめぐるこれまでの議論では、環境圧、現生人類との競争に敗れたこと、あるいは、その両方とする主張がある。
今回、Oren KolodnyとMarcus Feldmanは、ヒト族集団内の浮動に基づくネアンデルタール人の置換モデルを作成した。このモデルでは、種の出現頻度に変化が生じる原因は偶発的な出来事であり、選択的優位性ではないとされる。今回の研究で、移住パターンと当初の集団サイズ以外の点でネアンデルタール人と現生人類が同等だったと仮定した場合であっても、現生人類がアフリカからユーラシアへの移住を何度も繰り返したために現生人類がネアンデルタール人に取って代わることが確実になっていたことが明らかになった。現生人類が徐々にネアンデルタール人に取って代わったのであり、アフリカから外へ移住し、ユーラシアで定着した1つかそれ以上の小規模な現生人類の集団の子孫がネアンデルタール人に取って代わり、人口増加を経てヒト族集団の全体を占めるようになったことがこのモデルによって示唆されている。
ネアンデルタール人の絶滅が環境要因や現生人類の優位性によって早まった可能性は否定しきれないが、今回の研究で明らかになったモデルは、ネアンデルタール人の置換が必然だったことを示唆するだけでなく、他の原因因子の相対的役割の検証をさらに進める際の基準となっている。
doi:10.1038/s41467-017-01043-z
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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