【微生物学】地球における微生物多様性に関するデータのクラウドソーシング
Nature
2017年11月2日
さまざまな環境における2万7000点以上の微生物試料がクラウドソーシングによって集められて包括的分析が実施され、全球的な微生物とアーキア(細菌とは遺伝的に異なる単細胞生物群)の多様性についての解明が進んだ。このメタ分析は、地球マイクロバイオームプロジェクト(EMP)の第一段階の一環として実施された。EMPは、地球上の微生物の特徴を明らかにすることを目標としている。今回の研究成果を明らかにした論文が、今週掲載される。
微生物群集の集合・分布の仕組みと微生物群集間の相互作用の仕組みを断定することは、微生物生態学研究の分野の重要目標となっているが、こうした特徴を全球的規模で評価するには膨大なデータセットが必要となる。EMPは、オープンで協同的な研究活動によって微生物と古細菌の全球分布のカタログを作成することによって群集構造を支配する原理についての理解を深めることを目指している。このプロジェクトの第一段階で、Luke Thompsonたちの研究グループは、世界中の数百人の研究者によって収集された微生物試料のメタ分析を行い、その結果を明らかにした。Thompsonたちは、(土壌中の生息環境、水中の生息環境、動物・植物との共生に伴う生息環境に由来する)2万7751点の試料のリボソームRNA遺伝子塩基配列を分析して、22億個のDNA塩基配列を読み取った。
今回の研究は、特定の生物の全球分布だけでなく、群集の構成パターンも明らかにしており、微生物の分散とニッチ定着の仕組みに関する理解を前進させた。また、今回の研究に用いたデータは、今後の微生物生態学研究のための重要な参照基準と枠組みになる。
doi:10.1038/nature24621
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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