【クローニング】ドリーは若くして変形性関節症にかかっていたのではなかった
Scientific Reports
2017年11月23日
ドリー(成体細胞から作られた初めてのクローン動物)がクローン法によって誕生したために若くして変形性関節症にかかったという懸念には根拠がないという結論を示した論文が、今週掲載される。
ドリーは5歳半で左膝の変形性関節症を患ったことが会議要約に簡単に触れられていたために、クローン動物が早期発症型の加齢関連疾患にかかる可能性に関する懸念が高まった。これに対して、ドリーの作製に用いられた細胞株と同じもので作製された雌のクローンヒツジ4頭が8歳の時に実施された2016年の研究では、変形性関節症が軽度(3例)あるいは中等度(1例)に過ぎなかったことの証拠となるX線画像が得られた。
今回、Kevin Sinclairたちの研究グループは、当時の臨床記録やX線記録が保存されていないため、ドリー、ボニー(ドリーから自然妊娠で生まれた雌の仔)、メーガンとモラグ(分化の進んだ細胞から初めて作製された2頭のクローンヒツジ)のそれぞれの骨格についてX線検査を行った。その結果、ドリーよりもボニーとメーガンの方が、X線学的変形性関節症(rOA)が重症で、患部の関節の数も多いことが明らかになった。また、ドリーが6歳8か月の時には肩関節、手根関節、飛節のrOAを発症しておらず、rOAの全身的な分布も7~9歳のクローンヒツジと同じようだったことも判明した。
Sinclairたちは、ドリーとその同世代のクローンヒツジにおけるrOAの有病率と分布が自然妊娠で生まれたヒツジや健康な高齢のクローンヒツジと変わらないと結論付けている。
doi:10.1038/s41598-017-15902-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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