自閉症者は社会的化学信号に対する応答が異なっている
Nature Neuroscience
2017年11月28日
異なっており、逆の応答を示すこともあるという研究報告が、今週発表される。ASD者は、他者の感情を読み違えることがあるが、このことを今回の研究で得られた知見によって部分的に説明できるかもしれない。
哺乳類は、通常、嗅覚を使って他者の感情を読み取り、化学信号の知覚によって社会的コミュニケーションを行うが、ヒトも有意な社会的化学信号の伝達を行っていることを示す証拠が増えつつある。これまでの研究では、ヒトの化学信号が、年齢、攻撃性、幸福感、恐怖などの情報を伝えることが明らかになっており、こうした化学信号は、潜在意識に作用して、脳の活動と一般的な心理状態と情動状態に影響を及ぼすことがある。
今回、Noam Sobelたちの研究グループは、神経学的機能が正常な者が無意識に「恐怖の匂い」に触れると、自律神経系の活動が高まったが、ASD者は、そうならないことを明らかにした。「恐怖の匂い」とは、スカイダイビングを行う者が(コルチゾール濃度によって測定された)ストレスを感じて流した冷や汗のことであり、自律神経系とは、呼吸、心拍などの無意識の身体機能に関わる神経系の部分だ。また、神経学的機能が正常な者は、恐怖の匂いを放つマネキン人形よりも落ち着いて歩く人から採取された汗を発するマネキン人形を高く信頼し、ASD者は、恐怖の匂いを放つマネキン人形の方を信頼することも明らかになった。さらに、神経学的機能が正常な者とASD者が無意識に2種の人工的な化学信号に触れる実験でも両者間に相反する影響が見られた。
今回の研究では、神経学的機能が正常な者のグループもASD者のグループも体臭の識別と評価を行う実験では同じような反応を示し、意識的に感知できない化学信号に対する応答だけが異なっていたため、両グループとも嗅覚が正常なことが示された。Sobelたちは、化学信号に対して異なる応答を示すことの方が全く応答できない場合よりも大きな影響が生じる可能性が高いと推測している。応答が異なる場合には、情動信号の読み違いが起こる可能性があるからだ。
doi:10.1038/s41593-017-0024-x
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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