エルニーニョ現象によるアジアから南北アメリカへの森林火災の拡大予想
Nature Climate Change
2017年11月28日
汎熱帯林の火災発生件数とそれに伴う炭素排出量がエルニーニョ現象によって有意に増加することを報告する論文が、今週掲載される。今回の研究では、エルニーニョ現象によって汎熱帯林全体で降水量と貯水量が減少し、森林の発火と延焼が起こりやすくなっていることが明らかになった。こうした森林火災の発生地は、熱帯大陸上を季節的に移動するため、火災が発生する恐れを予想する上で役立つ可能性がある。
エルニーニョ/南方振動(ENSO)は、海洋-大気結合系における周期的変動で、熱帯東部太平洋の海面水温条件が平年より高いエルニーニョ現象と平年より低いラニーニャ現象からなり、2~7年の周期で繰り返し起こり、気候の年々変動に顕著な影響を及ぼす。
今回、Yang Chenたちの研究グループは、6回ずつのエルニーニョ現象とラニーニャ現象に対応する1997~2016年の人工衛星データを用いて火災による焼失面積と炭素排出量に関連する気候条件を調べ、エルニーニョ現象に関連する降水量と貯水量の減少によって汎熱帯林の火災による炭素排出量が増加し、ラニーニャ現象の場合の133%(平均)に相当することを明らかにした。また、Chenたちは、エルニーニョ現象が強まる時期に、8~10月に赤道アジアで最初に火災の発生件数が最も多くなり、この火災のピークが、翌年の1~4月には東南アジアと南米北部に移り、3~5月には中米、7~10月にはアマゾン川流域南部に移ることも明らかにした。
この論文でChenたちが説明する予測可能な火災の連鎖からは、ENSOに対する地球システムの応答に重大な遅れがあることが判明している。このことは、季節的な火災の危険度に関する予報の改善に役立つ可能性があり、エルニーニョ現象発生時に大気中CO2濃度の上昇速度が高くなることも一部説明できるかもしれない。
doi:10.1038/s41558-017-0014-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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