【神経科学】青年期の男女は大きな見返りを示されても自分のパフォーマンスを調節しない
Nature Communications
2017年11月29日
青年期の男女が難しい課題に取り組む際に、報酬、罰などの誘因によって自分のパフォーマンスを調節していない可能性を明らかにした論文が、今週掲載される。このように青年期の男女が目的指向的行動をとらないのは、認知作業に介在する脳領域と誘因の価値を測定することに関係する脳領域との接続(相互情報伝達)が発達の途中にあることを原因としている可能性が非常に高いことが今回の研究によって示唆されている。
これまで、成人を対象とした研究から、報酬が優れた動機付けとなる場合があり、本人にとって重要性の高い目標が設定されれば、一層の努力をなされることが明らかになっている。しかし、同じことが青年期の男女にも当てはまるのかどうかは分かっていなかった。今回、Catherine Inselたちの研究グループは、13~20歳の被験者に対して「惑星タスク(Planets Task)」という認知機能検査を実施した。このタスクでは、被験者が、提示された惑星の画像を正しく分類することが求められ、正しい答えには報酬が与えられ、誤った答えには罰金が科され、その額は、毎回異なった設定になっていた。この検査において、19歳と20歳の被験者は、高額の報酬と罰金が設定された時に高いパフォーマンスを示し、過去の研究結果と一致したが、それより若い被験者の場合には、誘因の多寡がパフォーマンスに影響を与えなかった。Inselたちは、誘因の多寡に応じてパフォーマンスを調節する能力が、価値に応答する脳領域と認知作業を誘導する脳領域との接続性に依存することを明らかにした。年長の被験者の場合、この接続性は、高額の誘因が設定された時に強化されたが、年少者の場合にはそのようなことがなかった。これは、年少者にパフォーマンスを調節する能力が備わっていないからとも考えられる。
以上をまとめると、厳しい環境において設定された高額の誘因を獲得しようとする場合に青年期の男女の応答が成人の応答と異なる原因は、前者の脳領域の接続が発達の途中にあることだとされる。また、青年期を通じて、動機付けが認知パフォーマンスに及ぼす影響は、継続中の脳の発達によって決まることが今回得られた知見に示されている。
doi:10.1038/s41467-017-01369-8
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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