【動物学】裏返しになったカメが自力で元に戻る時に甲羅の形が役立つ
Scientific Reports
2017年12月1日
裏返しになったガラパゴスゾウガメが自力で元の姿勢に戻るために要するエネルギーの量は、甲羅の形状に左右されることを報告する論文が、今週掲載される。自力で元に戻る能力の改善への選択圧がかかったことが甲羅の形状が進化した一因だと論文著者は考えている。
ガラパゴスゾウガメの甲羅は、主にドーム型と鞍型の2種類で、ガラパゴス諸島で複数回進化した。この甲羅は、一般に生息地によって種類が異なっており、鞍型のゾウガメの方が乾燥した低地環境を占有し、ドーム型のゾウガメの方は湿度が高く気温の低い高地を生息地としている。甲羅の形状は、独特の採餌ニッチに適応したものとする学説が提唱されているが、甲羅の形状が多様化した原因の1つとして自己復元力のちがいも考えられる。ガラパゴスゾウガメは、通常、でこぼこした表面を歩き、ひっくり返ったり、溶岩の割れ目に落ちたりすることが多いため、自己復元に時間がかかると死の危険が増す。
今回、Ylenia Chiariたちの研究グループは、ドーム型(3種)と鞍型(2種)のガラパゴスゾウガメ(合計89頭)の甲羅の三次元再構成を行った上で、(鞍型のゾウガメとドーム型のゾウガメの体内構造に差がないという前提で)2頭の生きたドーム型ガラパゴスゾウガメの質量中心を測定して、自己復元力を比較した。Chiariたちは、甲羅の形状に基づいたモデルを使って、鞍型のゾウガメの方がドーム型のゾウガメよりも自己復元に成功するために要するエネルギーの投入量が多いことを明らかにした。鞍型のゾウガメは、頭を地面に垂直に押しつけてから脚を素早く上下させて元の姿勢に戻るが、ドーム型のゾウガメは、脚と頭を動かして十分な勢いをつけたうえで元の姿勢に戻るのだ。Chiariたちは、鞍型の甲羅の形状に関連したいくつかの形質が進化して自己復元が容易になった可能性があると考えている。
doi:10.1038/s41598-017-15787-7
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
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